不思議と幸せ

小さな幸せ

『趣味の部屋・詩と私』 Luminasさんの詩より

 ウェブリブログで、2008年から2018年にわたって、サークル『趣味の部屋・詩と私』を主催してきました。と、以前、書きました。そこで、主にネットで出会った人たちの詩を紹介していた私ですが、2008年の頃、古今東西の有名な詩集などからこころに響くことばたちを紹介していたのが『いのちの詩(うた),光のことば』のルミナスさんでした。
 ルミナスさんの紹介する詩はどれもが、有名な詩人たちの詩で、私が紹介する詩は、私自身を含め殆ど素人の詩といえば言えたでしょう。そんななかで、数篇のルミナスさんの詩を紹介したことが思い出されます。ルミナスさんは、私が『趣味の部屋・詩と私』を始めて間もなく他界されたので、ほんの短い出会いでした。ルミナスさんは、私より二つ若かったです。
 
そんなルミナスさんの詩の紹介です。
 
 
記憶も及ばぬ 歳月のはるか彼方(かなた)
はるか遠くのあの世界で
あなたとわたしは 取り決めたのですね
この世界で ふたたび出逢い 約束を果たすと
 
わたしが 愛を学ぶために
わたしが よろこびを知るために
わたしが 試みられるために
わたしが 傷(いた)みを知るために
わたしが 裏切りに遭(あ)うために
わたしが 憎しみをみずから知るために
わたしが 手放すことを学ぶために
わたしが 忍耐を学ぶために
わたしが 過酷さを超えるために
わたしが 尽くすことを学ぶために
わたしが 与えることを知るために
わたしが 強さを得るために
 
この世界の善いこと悪いこと 美しいこと醜いこと
すべてを 身をもって知り 学ぶために
 
とりわけ大きな煩悶(はんもん)を 運んできたあなたが
あの世界で より深い約束を交わした相手だとは…
信じることは難しいけれど そう聞けば あなたを見る目が変わるのは
かすかな記憶のせいでしょうか
 
すべての約束は 順調に果たされています
愛もよろこびも 憎しみや苦悶(くもん) そして涙も
約束どおり わたしにもたらされたのですから
 
ともに約束を交わし 予定どおりに果たしてくれた すべてのあなた
ありがとう おしあわせに
 
この世でふたたび逢うとしても 逢わぬとしても
その約束を 信じるとしても 信じられないとしても
先に ありがとうと つぶやいてみましょうか
 
いまのわたしには 遠い約束の重みは
いつか空へ還(かえ)るその日まで わからないのですから
 
真実のみえない愚かなわたしが 約束を反故(ほご)にしようとしても
どうか 天の巨(おお)きな手が その成就(じょうじゅ)に力を貸してくれますように 
                                            
『陽光に晒されて』
 
さかしらに 思いめぐらすあなたが いなくなり
ひとこと言いたいあなたが いなくなり
援(たす)けてあげたいあなたが いなくなり
急ぐあなたも 迷うあなたも 悲しむあなたも 惜しむあなたも いなくなり
 
ただ在(あ)るだけの あなたになったとき
すべては 還(かえ)ってくるでしょう
ことばも 想い出も 交わりも…
 
高い梢を吹いて渡る風に漂白(さら)されて…
野面(のづら)を暖める陽の光に漂白(さら)されて…
流れてやまない水に洗われて…
しろく透きとおったことばや 想い出や 交わりが
 
もう語らなくてもいい(ことば)…
もう捨ててもいい(あれやこれや)…
もうなくてもいい(支え)…
 
すると 
新たなことばを 語るようになるでしょう
新たなものを 得るでしょう
新たな人びとに 囲まれるでしょう
 
新たな陽光の下で いままで知らなかった ほんとうの微笑が頬を輝かせるでしょう
 
『闇のかなたで共鳴するもの』 
 
あなたの発するあらゆる想いは 
ただあなたひとりの胸の裡に
拡がるだけではありません
人の思考や想いは 
宇宙全体を鳴らしている
無数の波動のひとつとして
わたしたちが思うよりも 
ずっと遠くまで届くのです
あなたの放った想いの周波数に
必ずどこかで共振している存在があるのです
 
悲しい周波数には 悲しいひとが
悪しき周波数には 悪しき思いを抱くひとが
無垢な願いの周波数には 同じ願いを抱くひとが…
 
宇宙はそれらのさまざまな周波数の音をすべて
同時に鳴らしている
深い倍音の森なのです
 
 
・そして、『いのちの詩,光のことば』  心の扉より。
 
心には たくさんの扉があります
わたしにできるのは ただノックしてみることだけ
 
<どうぞ>と やさしく迎え入れてもらえないかと
じっと耳をそばだてて 待つだけです
 
こばまれても がっかりはしません
なぜって
はるかな至高の存在に見守られているということが
わたしには大いなる糧(かて)だからです
 
         エミリイ・ディキンソン 訳詩 ©2007Luminas
 
心には その存在すら気づかない隠し扉がたくさんあります
開かずの部屋で何が待ち受けているとしても… 
ときには 扉を閉ざしたまま 入れてくれようとしないとしても…
それでもやはり ひとつひとつ丹念にノックしてみる価値はあります
ほどけないままの古い怒りの塊から発する瘴気(しょうき)や…
古い致命傷から流れ出る血膿(ちうみ)や…
そんなものが隠れているとしたら
家は日々ひそかに傷んで(いたんで)いくしかありません
根気よいノックの果て
永く閉ざされていた部屋の扉がひらき ブラインドが上がるとき
室内には 陽の光が射しこみ 風が吹きとおり
白日のもとで 部屋はあらたな息吹をとりもどすでしょう☆