不思議と幸せ

小さな幸せ

富嶽三十六景

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 46

46 「諸人登山」(しょじんとざん) 本作は『冨嶽三十六景』の中で唯一富士山頂を画題として、富士山の姿をあらわさず、富士山の内部を描いた作品となっています。画中の金剛杖を手に行衣をまとった人々は富士信仰を背景とした富士講と呼ばれます。富士詣…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 45

45 「駿州大野新田」(すんしゅうおおのしんでん) 本作品は東海道五十三次の宿場町である原宿と吉原宿の間に存在した新田集落からの景観を描いています。 構図としては「東海道程ヶ谷」「従千住花街眺望ノ不二」などと共通した画面手前を人物が横切る構成…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 44

44 「相州仲原」(そうしゅうなかはら) 本作品は、相模国仲原(現代の神奈川県平塚市中原)近辺からの景観を描いています。 渋田川と思われるゆるやかな流れの川に架けられた橋を渡る赤子をおぶった農婦や、全国行脚中と思われる風呂敷包みを背負い富士山…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 43

43 「東海道金谷ノ不二」(とうかいどうかなやのふじ) 東海道24番目の宿場町・金谷宿から見た大井川の景観を選定しており、大人数で川越を行う様子が細々と描かれています。 「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」といった馬子唄が詠まれるほ…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 42

42 「本所立川」(ほんじょたてかわ) 「本所」とは現代における東京都墨田区南部地域近郊を指し、北斎が生まれ育った場所です。木場に近い立川周辺には材木問屋が立ち並んでいたようで、本作品は材木問屋の建材置場を画角に収め、そこから見える富士山の…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 41

41 「甲州伊沢暁」(こうしゅういさわのあかつき) 本作品「甲州伊沢暁」では甲州街道の宿場である石和宿(笛吹市石和町)から望んだ富士を描いています。画面上部の空と富士山頂は朝の光で薄赤く染まり、下部では、まだ薄暗い中、出立する旅人たちで混み…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 40

40 「東海道品川御殿山ノ不二」(とうかいどうしながわごてんやまのふじ) 本作品は江戸四宿のひとつである品川宿からの富士山の景観を描いています。画中手前の小高い丘はかつてこの地に存在していた御殿山で、徳川吉宗が桜を植えて以降、行楽地として高…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 39

39 「駿州片倉茶園ノ不二」(すんしゅうかたくらちゃえんのふじ) 本作品の題名となっている駿州とは駿河国を指すが、「片倉」という地名がどこを指すかについては長年不明な状態となっていたが、かつて静岡県富士市中野近辺に実在していたことが判明した…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 38

38 「従千住花街眺望ノ不二」(せんじゅはなまちよりちょうぼうのふじ) 本作品は日光街道と奥州街道の最初の宿場町である千住宿にあった花街からの富士山の眺望を描いています。手前を行く人々は、日光街道か奥州街道を通って国許へ帰る参勤交代の大名行…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 37

37 「身延川裏不二」(みのぶがわうらふじ) 本作品は山梨県南巨摩郡身延町を流れる富士川からの富士山の眺望を描いたとされています。 波打つような急流河川の側の山深い脇道を旅人や駕籠、馬子などが多数往来している点から、日蓮宗総本山である久遠寺近…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 36

36 「五百らかん寺さゞゐどう」(ごひゃくらかんじさざいどう) 本作品は三大禅宗のひとつ、黄檗宗が亀戸村に建立した寺院である五百羅漢寺堂内に寛保元年(1741年)に築かれたさざい堂(三匝堂)からの富士山の景観を描いたものです。 さざい堂は、その構…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 35

35 「隅田川関屋の里」(すみだがわせきやのさと) 本作品は東京都足立区千住曙町の京成関屋駅、牛田駅近辺に存在した村落、関屋の里からの富士山の景観を描いたものである。 菅笠を被り旅装束を纏った三人の武士が土手の上を馬で疾走する様子を切り取り、…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 34

34 「東海道程ヶ谷」(とうかいどうほどがや) 本作品は東海道五十三次の宿場町である保土ヶ谷宿と戸塚宿の道程にある品野坂からの富士山の眺望を描いたものである。 富士山は片側の雪が解けており、晩春の時期を描いたものと考えられる。保土ヶ谷は武蔵国…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 33

33 「隠田の水車」(おんでんのすいしゃ) 隠田とは東京都渋谷区神宮前、いわゆる原宿を指す地域を指し、江戸時代においては渋谷川(穏田川)が流れる農村地帯でありました。 本作品では渋谷川から引き込んだ水流を利用した水車小屋の周りで洗い物をする女…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 32

32 「甲州三坂水面」(こうしゅうみさかのすいめん) 本作品は山梨県南都留郡富士河口湖町から山梨県笛吹市御坂町をつなぐ御坂峠を下った先の河口湖湖畔からの眺望を描いたものとされます。 画面中央にはうの島、妙法寺が描かれ、湖畔の集落である勝山村と…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 31

31 「相州箱根湖水」(そうしゅうはこねのこすい) 相州箱根湖水とは秋里籬島の名所図会『東海道名所図会』巻之五に登場する名称で、神奈川県足柄下郡箱根町にある芦ノ湖の別名です。 画面中央に大きく湖が描かれ、その湖畔には箱根神社と箱根駒ヶ岳が配置…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 30

30 「江都駿河町三井見世略図」 (えどするがちょうみついみせりゃくず) 駿河町とは現代の東京都中央区日本橋室町を指し、通りの正面に富士山が見える街並みから駿河国の名を冠した名が付けられました。 この地に呉服商として店を構えた三井越後屋(現三…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 29

29 「江戸日本橋」(えどにほんばし) 日本橋とは東京都中央区の日本橋川に架かる日本橋を指しており、江戸時代においては交通の要衝として賑わいを見せた地域です。東海道、中山道、日光街道、奥州街道、甲州街道という五街道の起点となっていた他、高札…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 28

28 「相州江の嶌」(そうしゅうえのしま) 本作品は湘南海岸の東端、相模湾の沖合に浮かぶ江の島とそこから見える富士山の景観を描いており、干潮を待って砂州を渡って江の島と片瀬海岸を行き来する人々が表現されています。 島を俯瞰するように江の島の密…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 25

25 「礫川雪ノ且」(こいしかわゆきのあした) 画題の礫川とは東京都文京区の西側にあたる小石川台と小日向台の間を流れる小石川下流地域を指しており、見晴らしの良い茶店で雪見を楽しむ江戸の町民の姿が描かれています。 雪晴れの朝の美しさが描かれ、『…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 24

24 「東海道吉田」(とうかいどうよしだ) 『三十六景』全図の内、「常州牛堀」「尾州不二見原」に次いで、富士から3番目に遠い位置(約140km)より描いています。 まるで客席から舞台を眺めるように正面から茶屋の店先を捉え、その中に富士山をさし示す茶…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 23

23 「登戸浦」(のぼとうら) 登戸浦はかつて千葉県千葉市中央区に存在した入江で、江戸時代には交通の要衝として繁栄していました。 鳥居の間から富士を望み、作品内には大小相似の鳥居が描かれ、潮干狩りに興じる家族の姿や仕事に励む漁師の姿が描かれて…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 22

22 「上總ノ海路」(かずさのうなじ) 上総は現在の千葉県中央部にあたり、東京湾側に限ると、北から、千葉市、市原市、袖ケ浦市、木更津市、君津市、富津市が該当する。画題の富嶽は遠景の水平線上にあり、上総側から見ていることになります。 木更津船を画…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 21

21 「下目黒」(しもめぐろ) 本作品の画題となっている下目黒は、東京都目黒区下目黒を指し、江戸時代は江戸幕府の御鷹場が置かれた、起伏に富んだ丘陵地であります。 稲刈りが終わった秋の季節、手に鷹を乗せた鷹匠の姿と近隣の農夫家族の姿が描かれてお…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 20

20 「相州梅沢左」(そうしゅううめざわのひだり) 相州梅沢とは神奈川県中郡二宮町の梅沢地区近辺、東海道五十三次の大磯宿と小田原宿の中間に位置する立場を指す地名です。 羽を休める5羽の鶴と飛翔する2羽の鶴と富士山を描いていて、風景画というよりも吉…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 19

19 「東都浅艸本願寺」(とうとあさくさほんがんじ) 本作品は東京都台東区西浅草に建立された東本願寺から見える富士山を描いたもので、本堂の屋根上で瓦の修繕を行う職人と、井戸を掘るための櫓、高々と舞い上がる奴凧を配置しています。 本堂の大きな屋根…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 18

18 「駿州江尻」(すんしゅうえじり) 現代の静岡県静岡市清水区に位置する東海道18番目の宿場・江尻です。 作品は強烈な突風が主題として表現されており、風に耐える旅人や、菅笠を飛ばされてしまった男、何枚もの懐紙を飛ばされてしまった女などが臨場感の…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 17

17 「甲州三嶌越」(こうしゅうみしまごえ) 本作品は山梨県富士吉田市から静岡県御殿場市を経由し、三島市に抜ける道中の難所、籠坂峠付近の山道から見える富士山を描いたものと考えられています。 画面を貫くように巨木を配し、富士山の優美な稜線を分断す…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 16

16 「遠江山中」(とおとうみさんちゅう) 本作品は静岡県西部地方を指す遠江の名を冠しています。画面中央に斜めに大きく配置された角材とそれを支える支柱が描かれ、支柱の間から富士山を見せるという幾何学的で大胆な構図となっています。 下には、大鋸の…

葛飾北斎と私 『富嶽三十六景』 15

15 「信州諏訪湖」(しんしゅうすわこ) 諏訪湖は長野県岡谷市、諏訪市、諏訪郡下諏訪町にまたがる湖で、北斎の「信州諏訪湖」は突き出した崖のような場所から俯瞰した湖を描いています。 手前に祠と二本の松を、左手奥に高島城と八ヶ岳、そして富士山を収め…